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元総理探偵・霧島幸四郎 絶体絶命!

元総理探偵・霧島幸四郎 絶体絶命!

武川行秀
講談社ノベルス (1993/04/05)
775円(税込)

 武川行秀こと、ミュージシャンでもあるタケカワユキヒデ氏の書下ろし長篇ミステリ。彼はミステリ小説を4冊刊行している。ミステリ作家としてデビューすることになった経緯は、前作『元総理探偵・霧島幸四郎の推理』(講談社ノベルス)に詳しいが、ミステリ以外にもファンタジー小説なども書いている。

 前作は意外と良くできていた。なので、今回も多少期待はしていたが、結局期待はずれであった。小学校で次々と事件が起こるというストーリーなのだが、まずトリックがない。しかも、犯人の行動は偶然の要素にかなり依存していて、いかにも小説然としている。なのに、小説的な面白さが欠けているのはどういうことだろうか。

 一つには、本格ミステリ的な舞台設定にもかかわらず、そこで繰り広げられる事件は、人間関係に重点を置いた、火サス的な内容であるのが原因だろう。かといって、その人間関係はあまりに複雑すぎて、興味がわかない。ユーモアミステリにもなっていないし、どう楽しめば良いのか分からないのだ。

 また、人間描写の甘さも問題だ。登場人物が多く、それぞれの人物は一応の属性を持っているのだが、だんだん混乱してくる。そして、殺人が起きたにもかかわらず、あっさりと気分転換出来てしまっているというのも気になる。殺人事件が起きた学校で、すぐにまた授業を再開するとは、到底理解できない。教師も保護者も何を考えているのだろうか。きっと、なにも考えていないのだろう。彼らはストーリを進めていくためのコマでしかないから。

 そして、最後のどんでん返しも全く驚けないし、それがあるために不自然さを助長してしまっている気さえする。殺害方法に謎がなく、とにかく犯人探しだけをしていくのは構わないが、どうしても飽きてくる。読者を惹きつける様な設定が必要だろう。

 後は、作家として、文章を書くことに対する意識が低いと思う。文末が「~た」の連続というのは、単調だし、読んでいて引っかかる。途中、ある人物が自分の行いを告白する場面で、「~ました」というのが永遠に続く場面は、事実の羅列にしか見えなかった。いくら告白とは言っても、相手に語りかけるときに、こんな話し方はしないだろう。こんな文章を平然と書くこと自体、理解できないし、それに対して編集者が何も言わないというのも不思議だ。

 本作を読んでもわかるが、作者は書きたいことを上手く処理できていない。書きたい気持ちはわかるのだが、本として販売する際には、読みたい人がいなくてはいけない。書き手の一方的な押し付けを読む読者はいないだろう。続編執筆の意欲があるようだが、次作は読者を意識した作品であってほしい。

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