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「英語対決!勝負だバカ6人」

 今回の中心は、英語。洋楽を使って英語に慣れる、というのもやはり、すでに広く実践されている内容で、これといった新奇さはなかった。

 このドラマで描かれる勉強法というのは、基本的にすでに提唱され、認められているものを少しアレンジし、誇張したにすぎないような気がする。もちろん、勉強法だけがドラマの魅力ではないので、全体を否定することはできないが、革新的な勉強法を期待していただけに、物足りない感じがしてしまう。すでに有効的な勉強法というのは出尽くしてしまったということかもしれない。それだけ、受験ということが一般的であるのだろう。

 なお、今回、東大英語の自由英作文は減点法で採点されるということが説明されたが、これは東大に限ったことではなく、ほとんどの場合、自由英作文は減点法による採点である。だから、曲がりなりにも高校の英語教師として働いている真々子(長谷川京子)が東大の問題を見て、減点法であると気付かなかったというのは違和感がある。龍山高校は大学受験をする生徒自体が少ないということだろうか。確かに、自由英作文が出題されるのは国立大学や、上位クラスの私立大学であることを考えると、彼女が知らなくても当然なのかもしれない。

 ちなみに、自由英作文に限らず、国語・社会・理科の記述・論述問題や小論文なども基本的に減点法で採点される(問題によって、必須事項が設定されている場合が多いが)。自由英作文で簡明な構成、容易な単語、短い文を心がけることは基本であるし、それは論述や小論文などでも同様だ。どれだけ丁寧に細かく書こうとも、必要最低限のことしか書いていない答案より高得点になることはない。むしろ、余分な部分に間違いがあれば、そこで減点されてしまう。減点される可能性を減らすためには、無駄なことを書かないに限る。

 そういう、受験の基本とも言える知識を身につけることは、受験体制に入る第一歩である。受験勉強(特に大学受験)は志望校に合わせた勉強が不可欠であるから、まずはじめに志望校の傾向を抑えなくてはならない。東大に受かった人が早稲田に落ちるなどということがざらにあるのは、早稲田向けの勉強をしていなかったというだけのことで、東大に偶然受かったということではないし、ましてや東大よりも早稲田の方が難しいというわけでもない(問題にもよるし、個人的な感じ方にもよるが)。

 だから、今回、特進クラスの矢島(山下智久)・水野(長澤まさみ)・緒方(小池徹平)・香坂(新垣結衣)・小林(サエコ)・奥野(中尾明慶)が、龍山一の優等生で、帰国子女の栗山祥太(橋爪遼)よりも高得点をとったのは当然と言える。桜木(阿部寛)が言ったように、情報は力なのだ。こと受験に関しては、情報の力は大きい。だから、多くの受験生は、膨大な情報を持っている大手予備校に通うのである。

「泣くな!お前の人生だ!」

 今回のストーリーには二つの山場があり、さらに教員たちへの試験や東大合格のための勉強法も多数紹介され、充実した内容だった。

 緒方英喜(小池徹平)と奥野一郎(中尾明慶)、奥野次郎(水谷百輔)の双子兄弟が引き起こした喧嘩騒動は、実のところただの兄弟げんかでしかなかったわけだが、次郎の偽証により、英喜が犯人となってしまった。そして、ここでもやはり学歴による不平等が存在した。秀明館高校に通う優等生次郎の言葉は無条件に受け入れられ、龍山高校に通う劣等生英喜の言葉は無条件に否定される。この理不尽な状況から抜け出すためには、優等生にならなくてはいけない。そのための手っ取り早い手段こそ、東大生になることなのだ。

 このドラマで面白いのは、まさにその部分である。普通、東大へはすでに優等生として認められている人間が、当然の流れとして、エリートコースの一環として行く。しかし、東大は優等生のためにあるのではなく、虐げられてきた劣等生、落ちこぼれたちのためにあるのだ。東大は納得できない不平等から抜け出すために目指すのだ。

 そして、もう一つの面白さは、社会に満ちた不平等の存在を一度も否定しないという点にある。不平等はいけないとか、社会は平等であるとか、そういう聞き飽きた妄言を桜木は全く口にしない。不平等は確実に存在する。だから、自分が上層に行かなくてはいけない。不平等を撤廃する必要などないし、そもそもそんなことは不可能だ。とにかく、自分がその餌食にならなければ良いのである。

 この考えは、無実の英喜に始末書を書かせた桜木の行動に如実に表れている。「ごくせん」でもそうだったが、無実の罪には断固として反対し、無実であれば無実を主張すべきだという考えが普通である。それはその通りだ。しかし、今回のような瑣末な事件で、しかも始末書だけで済む程度であれば、無実であろうと罪を認めたほうが楽な場合もある。不平等が存在する以上、それを覆すのは容易なことではないのだ。

 さて、結局一郎は事実を述べ、特進クラスへ入ることも決めた。その特進クラスで今回行われた授業は、理科(物理)と古文。化学・生物・物理・地学の4科目が存在する理科(全てを勉強する必要はないが)を1人の教員が請け負うというのもすごいが、イラストや実験で身につけるというのがどの程度効果的かというのも疑問である。そもそも、物理は身近な現象を対象とした学問であるので、身近に感じられるイラストや実験を利用するのは普通である。その上で公式をどう覚えるかや、複雑な問題をいかに容易な問題の組み合わせに分解するか(身近な現象に置き換えるか)が重要だろう。イラストで身につけても、それを使いこなすためにはもう一段階必要だ。それがどのように指導されるのかを期待したい。また、化学や生物に出てくる化学式の攻略法も紹介してほしい。

 一方の古文はマンガで親しむという、昔ながらの方法。古文や歴史の勉強にマンガを使うのはあまりに一般的すぎるが、他に良い方法がないというのも事実かもしれない。ただ、これも初期の段階だけで、最終的には普通の勉強をする必要がある。その部分での新しい勉強法を期待しよう。また、古文単語や英単語などを語呂合わせで覚えるのも昔ながらの勉強法である。語呂合わせの問題点は、本来一意に定められないはずなのに、一つの単語に一つの意味しか覚えないという一対一対応になりがちなところだが、それはどのように回避するのだろうか。

 そして、最後に桜木が「あとは英語だけだ」というような発言をしたが、現代文や小論文はどうするのだろうか。特に現代文は教えるのが一番難しい科目だと思うので、これをどのように教えるかが楽しみだったのだが、古文を教えていた芥山龍三郎(寺田農)が指導するのか。画期的な現代文の指導をぜひ見たい。

「壁にぶつかるまで我慢しろ」

 桜木(阿部寛)率いる特進クラスに、桜木の恩師である“東大数学の鬼”柳鉄之介(品川徹)が迎えられた。昔ながらのスパルタ教育、詰め込み教育主義者で、矢島(山下智久)ら生徒の反発を受けるものの、さすがは鬼というだけあって、やっていること自体は納得できる。

 息抜きも兼ねた「トランプ勉強法」も面白いが、なんといっても真骨頂は「問題解答同時プリント」である。実際に解くのではなく、解き方を頭の中で考え、3分たったら答えを見て確認という方法はとても理にかなった勉強法である。これに類する勉強法はすでに和田秀樹らによって提唱されているので、特に目新しいわけではないが、それだけに説得力があった。

 数学はとにかく数をこなすことが必要なので、計算部分を省略し、ひたすら解き方を勉強するというのは、限られた勉強時間を有効に利用する方法だろう。個人的には、この勉強法にいたる前の、基本的な公式類を習得する段階における斬新な勉強法を提示してほしかったのだが、それは普通に勉強しろということか。普通に教えて彼らがこんなに早く習得できるとは思えないのだが……

 ところで、今回、桜木が東大出身でないことが明らかになった。桜木が東大卒であるならば、東大を出れば良い生活が送れるという彼の主張は、彼自身の置かれている状況(水道代も払えないほどの苦しい家計)と矛盾する、というようなことを以前、どこかに書いた記憶がある。しかし、桜木が東大卒でないとなると、東大に行けという主張は、彼自身の経験を通してのメッセージなのだろう。それならば大いに納得できる。

「遊べ!受験はスポーツだ!」

 桜木(阿部寛)は雰囲気こそウサン臭いものの、やっていることは他の登場人物の誰よりもまともだ。特に、他の教員の行動の幼稚っぽさといったら……。それゆえの龍山なのだろう。

 桜木率いる「特進クラス」には、新たに水野(長澤まさみ)が加わり、計五人となった。その五人の中でリーダー的な存在になっているのが、矢島(山下智久)である。彼は、桜木に300万円で買われたわけだが、彼をクラスに引き込んだのは、300万以上の価値があった。彼は途中であきらめかけた、緒方(小池徹平)や香坂(新垣結衣)を繋ぎとめ、彼らのヤル気を出すきっかけとなったのである。おそらく、桜木が矢島をあそこまでして引き入れたのは、彼の性格を見込んでのことだったのだろう。

 桜木による、勉強はスポーツだという意見は理解できる。秀明館高校の教員である山本(矢沢心)のカレシ候補の一人、東大卒の田中(村上大樹)が反復練習によってボーリングを上達させていたのは、勉強においても反復練習が大切であるということを表していたのだろう。事実、スポーツも勉強も反復が必要であるという点では似ている。

 ただ、「数学は瞬間的に、自動的に、機械的に解け」という桜木の教えは納得しがたい。基礎段階での限定的な場合のことであるならば、賛成できるが、これが東大の問題となるとそうはいかないだろう。東大入試の合格点が低いのは、公式を覚えているだけで反射的に解けるような問題が出題されないからである。東大入試に必要なのは、公式を公式として覚えるのではなく、公式の成立過程を理解し、自分なりに咀嚼することではないだろうか。だから、公式を覚えて機械的に解くことは、初期段階おいては必要なことだろうが、今後もこのやり方で東大に合格できるとは思えない。また新しい勉強法が出てくることを期待する。

 それにしても、あの数学のテストはさすがに無理だろう。高校数学の問題というから、高1程度なのかと思っていたら、高3レベルの問題だった。しかも、対数・三角関数・微積分・数列・行列と、数III数Cの範囲まで入っているようだ。100問程度あったようだが、それを20分で解くというのは、東大合格者でも無理だと思う。100問だとすると、一問12秒で解かなくてはいけない。小中学校レベルの単純な計算問題ならまだしも、高校最高レベルの問題をそんなスピードで解ける人がいたら、ギネスものだろう。

 さらに、机の上には、問題用紙のみで、計算用紙が一枚もない。その問題用紙も、各問の間は1、2行しかなく、解答を書き込んだらそれだけで埋まってしまう。どう考えても暗算で解けるような問題ではないのに、計算スペースが全くないというのは理解できない。あのレベルの問題であれば、計算用紙を別に用意するか、あるいは、問題の間のスペースを十分にとるのが当然だろう。時間を考えると暗算でやるしかないから、計算スペースなど必要ないということかもしれないが、おそらく、プロの数学者でもあの問題を暗算で解ける人はいないだろうし、20分で100点をとれる人はいないだろう。

 あのテストで半分も取っていれば、その時点で数学の学力は相当のレベルに達していると思われる。小中学レベルで四苦八苦していた人間が、一気にそのレベルに達するとは思えない。あの中には、三角関数を積分する問題まであったが、あれを解くためには、三角比・三角関数・微分・積分を理解していなくてはいけないし、それを理解して解けるようになるには、式の計算や方程式、1・2次関数などのより基本的な部分も押さえてなくてはいけない。5日程度では絶対に不可能だ。

 ああいう問題を出題しておきながら、教頭を中心とする反桜木の教員たちは、結果を不安げに待っていたが、はじめからあの問題が解けるわけがないというのが分からないのだろうか。万が一にも、などという可能性は皆無だ。採点の結果は描かれなかったが、もし、1問でも正解していたとしたら、それは本当に奇跡だろうと思う。

「自分の弱さを知れ!」

 作中で、矢島(山下智久)も言っていたが、桜木(阿部寛)の発言は詐欺師に近い。だが、その胡散臭さが阿部寛の魅力であり、このドラマの面白さでもある。

 それにしても、「特進クラス」のメンバーがあまりに簡単に集まったのには驚く。矢島が入るまでには時間もお金もかかったが、あとの緒方(小池徹平)、香坂(新垣結衣)、小林(サエコ)はあっさりとしすぎている。矢島が入ったからという理由なのだろうか。人生の分岐点とも言える、大決断のはずなのに、なんともお気軽な選択だ。それが龍山高校の生徒らしいところなのかもしれない。

 ところで、水道も止められるほどに貧乏な桜木が18万円もするトランペットをどうやって購入したのだろうか?矢島のトランペットを買い戻すために、工事現場でのバイトをしたということか。だとすると、桜木というのは、大雑把そうに見えて意外と細やかな心を持った人間に違いない。

 なお、矢島を説得するシーンで、桜木が「受験は今の日本に残された唯一の平等」というような発言をした。しかし、それには賛成できない。ある程度の資金がなくては、平等な土台に立って受験をすることなど不可能だからだ。
 大学受験であれば、まず高校を卒業(あるいは大検に合格)しなくてはいけない。それには、授業料などがかかる。また、実際に受験する段になっても、決して平等ではない。金持ちは、有名な予備校や家庭教師によって、効果的な受験勉強をし、様々な情報を得ることもできる。一方、そんな余裕がなければ、自力でやるしかないが、参考書代もかかるだろうし、長年の蓄積のある予備校などのノウハウを得られないのは、決定的に不利である。それを乗り切ったとしても、最後には受験料という問題もある。
 また、住んでいる地域によって、不利になることもあるだろう。センター試験は各地で受けられるが、たとえば東大の本試験を受けるとなれば、東京まで来なくてはいけない。地方からの受験者にとっては、交通費や宿泊費というような費用面の問題もあるし、不慣れな地域での試験というのは圧倒的に不利である。このように、受験といえども、そう単純に平等だとは言えないと思う。

 それはともかく、とりあえず、今回までは前奏で、次回以降、本格的に「特進クラス」が始まる。果たして、どんな勉強法なのだろうか。そして、クラスのメンバーたちはついていけるのか。他の教員たちはどうなるのだろうか。まだまだ目が離せない。

「バカとブスこそ東大へ行け」

 一応は期待程度の内容だったと思う。物足りない感じもしたが、初回はこの程度だろうか。仕方のないことだが、主要人物の紹介とドラマの方向性の提示に終始した感もある。

 桜木建二(阿部寛)は口が達者な貧乏弁護士。この設定は、「最後の弁護人」「トリック」での彼の役にそっくりなのだが、同様の設定に見慣れているせいか、ハマリ役のような感じがする。阿部寛にはどことなくウサン臭さと投げやりっぽさが感じられるので、こういう役に向いているのかもしれない。彼の出るドラマは彼の言動を観ているだけでも面白い。だから、本作も阿部寛主演というだけで楽しみなのだ。

 一方、龍山高校3年生の主要なメンバーは矢島雄介(山下智久)、水野直美(長澤まさみ)、緒方英喜(小池徹平)、奥野一郎(中尾明慶)ら。それにしても、小池徹平はこのところ、あらゆる学園ドラマに出演している。「ごくせん2」「ウォーターボーイズ」「ヤンキー母校に帰る」などと大忙しだ。バーニング所属だからだろうか?その割に、相方のウエンツ瑛二はドラマではほとんど見かけない。演技力や人気の問題なのだろうか。

 また、山下智久が挿入歌を歌うということが話題になっていたが、第1回の中では、あまり効果的な使われ方ではなかった気がする。「ごくせん2」では亀梨和也の「絆」が挿入歌として使われていたが、こちらはとてもよかった。メロディーや歌詞が作品に合っており、効果的な場面で使われていたので、いまでもあの曲を聞くと「ごくせん」を思い出すという人も多いだろう。本作での「カラフル」がそれに匹敵する曲になるかどうかは今後にかかっていると思うが、どうもうまくいかないような気がしてしまう。

 ところで、このドラマは同名のコミックが原作だが、そのコミックは郁文館学園を意識して作られたのだろうか。郁文館は歴史ある名門学校だったが、土地の運用などに失敗し、経営に行き詰まった。その再建に乗り出したのが居酒屋チェーン「和民」などをはじめとして、介護分野など幅広い経営を行うワタミフードサービス社長の渡邉美樹氏である。彼が行った再建の様子は、日本テレビ系列の「ザ・ノンフィクション」(東京では日曜午後2時から)という番組において、第2弾まで放映された。その第2弾が放映されたのはつい1、2週間前のことだ。経営の成り立たなくなった高校を、進学率を高めることで再建するという方向性が似ているので、意識しているように思うのだが、どうなのだろうか。

 それはさておき、ドラマとしては、桜木の言動に注目したい。それと同時に、個性豊かな教員たちの待遇も見所だろう。また、当然ながら生徒たちにも目を向けなくてはならない。だが、初回を見る限りでは、生徒たちに魅力を感じられなかった。阿部寛主演ドラマでは、彼が強すぎて他の出演者が隠れてしまうことがあるので、生徒役の俳優たちもがんばって対抗してほしい。桜木、教員、生徒のバランスが釣り合えば、きっと面白い作品になるだろう。

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